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伝わる&売れる文章のルール伝わる&売れる文章のルール

ルール33 誰でも書ける ≠ 売れる文章が書ける

売れる文章講座

あなたも今すぐ「売れる文章」が書ける?

 
■それでは、今日の問題です。次の文で始まる「作品名」を答えて下さい。
 

【問題】
「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」先生は、黒板に吊した大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指しながら、みんなに問をかけました。

 
 
【答え】
 
 
↓↓
銀河鉄道の夜(宮沢賢治)
 
 
■言葉の天才 宮沢賢治。
 
宮沢賢治というと子供向けの童話や詩集という、イメージを持たれている方も多いかもしれませんが、私は宮沢賢治は「ことばの天才」だと思っています。無数に存在する「言葉」の中から、たったひとつの言葉を選び物語を紡ぎ出していくセンス。そこに賢治の才能のひとつがあるのでは、と思うわけです。
 
今、私達はメールやブログなどのように「自分の考えを、言葉で表現し、他者に伝える」ということを、気軽で簡単に試みることができる、環境の中に生きています。しかし「文章を書く」ということが、あまりにも日常的で身近すぎる行為なために「文章なんて、少し練習すれば簡単に書ける」と、思い込んでしまいがちな部分があると思うのです。
 
たとえば情報伝達を目的とした文章ならば「12月23日午後5時 ○○駅前集合」と単語を並べるだけでも良いでしょう。仮に「12日23日午後5時 ○○前駅集合」と、誤字が二回続いたとしても「ああこれは誤字だな」と、読み流すでしょう。そもそも誤字に気がつかなかった人もいるかもしれません。知人とのコミュニケーションの場に置いては言葉選びよりも量と内容と速度が重視されますから、このレベルでの文章制作でも十分かもしれません。
 
しかし。しかし、広告のように「第三者」に向けて書く文章においては、この段階で留まってはいけません。自分のことを知らない、つまり、あなたに興味がない人に対して届けようとするならば、今までとは違ったレベルでの言葉選びが必要になってきます。「一見すると、簡単で、平凡な文章であったとしてもプロの文章には仕掛けと技法が、込められている。決して、素人の文章ではない。」三島由紀夫が書いているように「誰も文章は書ける =伝わる・売れる文章が書ける」わけではないからです。より深みのあるところから「これだ」と感じる言葉を、上から救い上げる技術が必要になってくるのです。
 
 

■言葉の天才の世界に、ひたってみよう

 
宮沢賢治の作品はストーリーの壮大さや、テーマの魅力さが魅力であることは、いうまでもありません。しかし言葉の選び方、捕らえ方、そのような部分に視点をおいて、宮沢賢治の言葉そのものを「楽しむ」と、今までは見えなかったものが見えてきます。わかりやすくやさしい言葉で書かれた物語。鋭い切れ味でまっすぐに突き刺さってくる詩。わかりやすく、それでいて奥深い賢治の作品は読み返す度に鮮烈な刺激を与えてくれます。
 
文学作品を読む事は、ビジネス文書を書く際に直接関係性はない、と思われるかもしれませんが、私はそうは思いません。文学作品という、作者がひとつひとつの言葉に想いを込めて選び紡ぎ上げてきた文章に触れることで、言葉そのものの豊かさと面白さに気がつき、また一段上から言葉を選ぶことができるようになってくるはずです。
 
まずは、どっぷりと天才の世界にひたってみてください。ひとつひとつの言葉を楽しんでみてください。それらがじんわりと身体に染み込んでいったあと、そこから生まれてくる言葉は今までとは異なった雰囲気をまとっていることでしょう。
 


伝わる文章講座  佐藤 隆弘 拝


追記
この文章を書いた当時は、私自身が「賢治の言葉の魅力」を再確認して、そこにどっぷりと浸っていた時期でした。ぜひみなさんにも賢治の作品をおすすめしたい。手に取ってもらいたい。と、そのような暑苦しい気持ち(?)が溢れてしまって、逆に趣旨がぼやけてしまっている部分もありますが(笑)この文章を読んで「それならひさしぶりに(宮沢賢治を)読んでみようかな」と思って下さる方が表れたのなら、作者としてはうれしく思います。
 

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